環藝録

写真でつなぐ広島風物記録

「絵図になった風景」2 鹿ぞなくなる

江戸時代に描かれた『芸州厳島合戦之図』は、厳島神社社殿の周囲三方と東方の海岸に鹿の絵がある。山中には毛利軍を示す赤い幟が、宮尾城と相対する塔の岡には陶軍を示す幟が一つ。
大正四年写しの同じ合戦図では鹿は省略されている。
もちろん無意味に描かれたのではなく、元就上陸に絡んで

此所ニ鹿一飛来ル、鹿ハ厳島ノ明神ノ使者也、厳島ノ明神毛利家ノ氏神也、実ニ明神ノ御加護之印也ト元就ヲ初付随諸勢大勇

という説明で物語を彩る。