鏡味明克「えびす神の地名字」によると、「蛭子」が古例に多く、「胡(胡子)」の表記は広島に多く、「戎」は阪神(西宮・今宮)を元にして全国的に多い。一字一音の表記が散在し、「恵美須・恵比寿・恵美酒」が多い。
『廣島縣神社誌』に載っているえびす神社は、広島市だけでも10箇所ある。その表記は以下のとおり。
他にも"雲石街道・広島〜可部"に載っているだけでも7箇所の胡(胡子)神社がある。その中では、祇園*2の安神社の摂社に「恵比寿神社」の表記も見える。また、「中須胡子神社」*3と表記されている神社は『廣島縣神社誌』では「恵美須神社」で立項されている。
訓読みの「胡(胡子)」と、一字一音の「恵美須」などは併存して、どちらかに固定はされていないようである。
なお、郡山城下の胡神社を発祥として広島市胡町に鎮座する胡神社は、事代主命・蛭子命・大江広元を祀っている。大江広元を祀っている場合「戎神社」の表記は間違いと言っていいかもしれない。
参考
- 鏡味明克「えびす神の地名字」『近代語研究〈第7集〉吉田澄夫博士頌寿記念論文集』武蔵野書院1987
- 『廣島縣神社誌』広島県神社庁
- 西国街道を行く広島・山口・岡山編 http://www.c-haus.or.jp/kaidou/index.htm
- 美鈴神社 http://misuzu-town.net/misuzujinja/index.html