環藝録

写真でつなぐ広島風物記録

むくむくと雲

「むくむく」で表現されるのは、
青空文庫検索「青検」 -むくむくをざっと見て、寝床から起き上がったり、肥え太っている状態だったり、草木や動物がうごめく様だったりする。
中でも多いのは雲に対して「むくむく」。

この頃よく雨が降りますが、今日は雨のあがつた空にむくむくと雲がただよつてゐます。今日は八月六日、ヒロシマの惨劇から五年目です。僕は部屋にひとり寝転んで、何ももう考へたくないほど、ぼんやりしてゐます。
原民喜 ガリヴア旅行記  K・Cに

まこと、K――町に、あの爽やかな「夏」の象徴であるむくむくと盛り上った雲の峰が立つと、一度にワーンと蜂の巣をつついたような活気が街に溢(あふ)れ、長い長い冬眠から覚めて、老(おい)も若きも、町民の面(おもて)には、一様(よう)に、何(なに)となく「期待」が輝くのである。
蘭郁二郎 鱗粉

するうちに、いつのまにか、日の光が隠れてしまって、今まで低い麓(ふもと)の方にしか出たことのないまっ黒な夕立雲が、驚くほど高く空の上に出てきて、むくむくとふくれ広がってきました。
豊島与志雄 コーカサスの禿鷹

その医学士とわかれて、窓外を見ると、半天に雲がひろがりつつあつた。一方の天が晴れて澄みきつて居るのに、一方には綿のやうなむくむくとした雲がひろがつて来るその動きが見える。その動きが相当の速さであることは汽車の速力と比較すれば分かる。そのうち雲のなかで雷鳴がした。
斎藤茂吉 雷談義

 
晴天の中に黒雲まじりの夏の入道雲、なんて写真を用意できるかというと、出来ていないわけで。