『芸備国郡志』土産門では、賀茂郡の「西條柿」と佐東郡の「祇園坊カ柿」が載っており、どちらも干し柿とすることで「佳菓の第一味」「蔗糖・蜂蜜と雖も及ぶ所にあらず」*1という評価を得る。
『藝藩通志』では藩全体にわたる物産として「柿」が載っているのはもちろん、多くの郡の物産として紹介されている。(柿渋も含めて)
柿 河戸、可部、中島、下深川等の村の産、味殊によし、數種あり、白柿に製して、四方へ出す、
巻七十二 安藝國高宮郡 物産
柿 西條柿とて、昔より名産なり、一説には、最上柿とかきて、汎く當國の柿、上品をいふともいへり、
巻八十 安藝國賀茂郡 物産
桃、柿 並に大長村に多く出る、柿は核なく、味殊に佳なり、
巻八十九 安藝國豊田郡 物産
白柿 籤柿 因島村に多くあれども、田熊村殊に多く製す、
柿漆*6 諸村にもあれど、三庄村、殊に多く製して、廣く賣出す、
巻九十七 備後國御調郡 物産
振り仮名は廣島圖書館の刊本(の復刻)に従った。
西條の柿は「昔より名産」ということで引き続き載っている。沼田郡(旧佐東郡)の柿は祇園(下安)の寺から相田の寺の名前がとってかわっている。
他郡の諸村で作られているなかでも、可部近辺・因島・大長・畠敷あたりが盛んな様子。