環藝録

写真でつなぐ広島風物記録

名産の柿

芸備国郡志』土産門では、賀茂郡の「西條柿」と佐東郡の「祇園柿」が載っており、どちらも干し柿とすることで「佳菓の第一味」「蔗糖・蜂蜜と雖も及ぶ所にあらず」*1という評価を得る。

藝藩通志』では藩全体にわたる物産として「柿」が載っているのはもちろん、多くの郡の物産として紹介されている。(柿渋も含めて)

柿漆*2 尾道生澁*3とて名あり、
巻三十四 備後國尾道 物産

*4 相田村に出る、尤佳實なり、世に正傳坊柿と稱す、
巻四十六 安藝國沼田郡 物産

白柿*5 吉田、山手村等、多く製す、
巻六十五 安藝國高田郡 物産

柿 河戸、可部、中島、下深川等の村の産、味殊によし、數種あり、白柿に製して、四方へ出す、
巻七十二 安藝國高宮郡 物産

柿 西條柿とて、昔より名産なり、一説には、最上柿とかきて、汎く當國の柿、上品をいふともいへり、
巻八十 安藝國賀茂郡 物産

桃、柿 並に大長村に多く出る、柿は核なく、味殊に佳なり、
巻八十九 安藝國豊田郡 物産

白柿 籤柿 因島村に多くあれども、田熊村殊に多く製す、
柿漆*6 諸村にもあれど、三庄村、殊に多く製して、廣く賣出す、
巻九十七 備後國御調郡 物産

白柿*7 諸村に製し、尾道福山へ賣る、
巻百十二 備後國三谿郡 物産

白柿*8 畠敷諸村多く柿をうゑ、乾柿にして賣る、畠敷柿といふ、
巻百二十九 備後國三次郡 物産

白柿*9 搗栗*10 二十村、此兩種を出す、
巻百三十五 備後國恵蘇郡 物産


振り仮名は廣島圖書館の刊本(の復刻)に従った。
西條の柿は「昔より名産」ということで引き続き載っている。沼田郡(旧佐東郡)の柿は祇園(下安)の寺から相田の寺の名前がとってかわっている。
他郡の諸村で作られているなかでも、可部近辺・因島・大長・畠敷あたりが盛んな様子。

*1:『宮島町史』所収読み下し文

*2:しぶ

*3:きしぶ

*4:かき

*5:ほしがき

*6:しぶ

*7:ほしかき

*8:ほしかき

*9:ほしがき

*10:かちぐり