環藝録

写真でつなぐ広島風物記録

藝藩通志の厳島部分

芸藩通志の凡例に、

一、厳島は藩内にても、霊異非類の地なれば、島志の製、おのづから外邑と同じからず。故に古文書、古器物、藝文なども、皆本志に附て観るものヽ便にしたがふ、他地の例にあらず

といい、全159巻のうち、第十三巻から第三十二巻の19巻分を厳島に割いている。他の土地では別に置かれる「古文書、古器物、藝文」も巻十八以下に連続して載せている。

巻十三から十七までは以下のような構成となっている。

巻数 部門名 内容
13 圖考 絵図三種類
總説 島の概況
神廟起源 鎮座の所伝
神階 律令期の位階
神封 厳島神社領の履歴
造営 社殿造営の履歴
宮殿廊廡 厳島神社に付属する建造物
大鳥居 大鳥居建造の履歴
14 屬祠攝社 島内外の摂末社
祭祀祈祷 神社の年中行事
巡島禊祓 七浦の巡拝
15 佛觀 仏像等の安置される建造物
僧院 僧侶の居住する建造物
祠官職員 神社に関わる役職
市街公廨 大きく東町と西町に分れる町屋
戸口 人口の内訳
舟船 船の種類
16 故事 都からの参詣者
名勝古蹟 島内の地名を列挙
物産 植物・魚貝類・鉱物・工芸品・加工食品
17 風俗 島で特徴ある慣習
祥異 七不思議的な
人物 神官・僧侶・弓の名手・竹工の名人
孝義 藩より孝行などを賞された人
城墟戰地 厳島合戦の故地


なので、神社の歴史を知りたい場合は13・14巻を、まだ寺院が多かった頃の様子を知りたい場合は15巻を、近世の名所として紹介される厳島を知りたい場合は16・17巻を参照することになる。
まあ、復刻版の第一巻にあたれば良い、ともいう。
これを今の観光ガイドに仕直すとしたら、観光施設を「市街公廨」で解説して、「舟船」を交通手段全般にして、「城墟戰地」に近代の要塞跡を加えたり。「古文書・古器物」は大量にあるのでそれだけで図録にして、詩歌や紀行文の収録されている「藝文」には、宮島文庫*1の諸作品も取り込んでしまったり。