地形としての「めぐり」の意味は、『角川古語大辞典』の中で言うと、
めぐる 円を形成するように動く。
(略)
11 周囲をぐるりと囲む。取り巻く。また、そのような様態をなして存在する。囲繞する。
イ 地形や事物の存在態としていう。
(略)「山めくりてふところのやうなるに(蜻蛉・中)」
にあたるのだろうけれど、「廻神」のような神が降臨して(または神輿が)巡ったという由来になると、地形とは関係なく、
8 多数の箇所を順次に経由して移動する
という意味になる(地形由来かもしれないけれど)。
「めぐり」で始まる地名を『日本歴史地名大系』の索引から抜き出すとこれくらいある。
地名 | 所在 | 地図へのリンク | 備考 |
めくりや在家 | 山形県西置賜郡白鷹町 | ||
巡り矢 | 福島県白河市 | ○ | 谷津田川左岸丘陵 |
廻谷地村 | 福島県耶麻郡猪苗代町 | ○ | 小黒川東岸猪苗代湖北岸の平地 |
廻路*1 | 栃木県栃木市 | ○ | 廻峠とも・小野口から小野寺に通じる道 |
廻り屋 | 栃木市那須町高久 | - | 廻り谷とも |
巡廻 | 茨城県 | - | 新治郡の郷名(和名抄) |
廻り沢村 | 東京都世田谷区 | ○ | 旋沢村(天文) |
廻り田村 | 東京都東村山市 | ○ | 回田・回り田とも・現小平市の「廻り田新田」を派生 |
廻地蔵*2 | 京都府京都市山科区 | ○ | 六地蔵めぐりの一つ。四ノ宮地蔵とも |
廻原古墳群 | 島根県松江市朝酌町 | ○ | 大井手川下流右岸の低丘陵(廻原丘陵)上に分布 |
廻山古墳 | 岡山県赤磐郡山陽町 | - | 平野中の孤立した小丘陵上 |
メクリ田山 | 山口県小野田市 | - | 石炭産出 |
廻淵*3 | 高知県香美郡物部村 | - | 「葛橋畔有険路、大雨洪水時難行、回紆由他路過故名」(土佐州郡志) |
廻里江*4川 | 佐賀県杵島郡 | ○ | 廻里・廻里津の集落も |
廻洲*5村 | 大分県大分郡野津原町 | ○ | 派生:廻栖野*6村 |
巡り尾砦跡 | 宮崎県日南市酒谷 | - | 塚田越の頂上・相良氏が布陣したことにより「球磨陣」とも |
廻*7村 | 鹿児島県姶良郡福山町 | ○ | 女久利(文禄) |
名付けた理由が載っていた「廻淵」の場合、そばの道が迂回を要する時があることによる、。小地名なのでわかりやすい。
その他の例だと、対象となる地点(洲・原・山・尾・江・谷・沢)の周辺を何かしら取り巻くものがあるようだけれど、地形図だけではよくわからない。
地図を見てわかりやすいのは「廻路」の峠道。今は高速道路が直線的に通過できるけれども、昔の道は廻路のほうを回り込まないといけない。
一つ、明らかに地形によらない命名が「廻地蔵」で、平安京の六地蔵めぐりのうちの一箇所のこと。しいて言えば神社由来の廻神に近い種類。